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2015年4月号 福 おかんさんより、おてがみが届きました

『お母さんのちから』


蘭の会の皆さま、はじめまして
ご縁があって、福島の地から、おてがみを書かせていただけること、感謝しております

皆さまの紡ぐ『ことば』が、私の想像力のスイッチをONにして、さまざまな感情、想いを湧き上がらせてくれました

同じようにはいきませんが、私の拙い文章から、福島の今を僅かでも想像していただけることを祈りつつ…しばしお付き合いくださいませ


わが家では、母子3人が川の字になって寝る

今夜も、子どもたちの寝相の悪さに苦笑しながら、2人の隙間に滑りこむ

子どもたちの息づかいを感じながら、手を伸ばせば温もりに触れることができる幸せを、噛みしめる

今こうして 生きていること
今こうして 福島で生きていること
私も、子どもたちも 願ってここに居る
私も、子どもたちも 選んでここに居る


私たちのふるさと福島は、美しい山々と清らかな川、緑豊かな自然に囲まれた素晴らしい天地だった

福島出身の洋画家、高村智恵子は『福島には本当の空がある』ということばを 残した

その碧く澄んだ空が、あの日 放射性プルームに広く覆われてしまった

そして、美しい自然とともに 子どもたちの体は汚染されたのだ

目には見えないが、それは確実に この地に降り注いだ

ベクレル グレイ シーベルト 耳慣れないコトバ
ただちに影響はない 繰り返されるコトバ
隠された情報 遅れた避難 初期被ばく 偽りのコトバ

国も、県も、行政も、病院も
現状は危険ではない、安全だと言い切った

子どもたちは4月からマスク姿で通学
屋外活動は制限され、春の運動会や夏のプール授業は中止された
どう考えても安全とは思えなかった
母として本能的にそう感じていた
子どもたちの鼻血 口内炎 目の下のクマ
腹痛 下痢 免疫力低下 何かがオカシイ

私はずっとモヤモヤしていた

御用学者たちの説明会
腕組みし壁に寄りかかり話すコトバに 誠実さは感じられなかった
会場からマスクの有効性を質問されると、花粉症には有効だが、放射性物質には意味がない 現状は危険ではないからマスクも必要ないと笑った
日本人は2人に1人がガンになり、3人に1人がガンで死ぬ、放射能でガンになる確率より喫煙でガンになる確率の方が高い 冒頭から話し始めた学者もいた

原発技術者から聞いたという、炉心溶融しているのでは?との質問には、会場からヤジが飛び、質問は中断させられた

異様な雰囲気が漂った
みんな本当のことを知りたくて集まって来たはずなのに、本当のことを聞くのが怖いのだ
偉い学者に安全だと言ってほしいのだ
安全だと思い込みたいのだ

県立医大から職場に届いたFAX 福島は安全なのだから、避難するなど狂気の沙汰と書かれていた
職場では、避難した者は懲戒免職にするという命令がでた

何かがオカシイ
私のモヤモヤは治まるどころか、怒りと不信感が拍車をかけて、大きく膨れあがっていった
いくら安全だと言われても安心できない
そもそも安心の基準というのは、人それぞれではないのか?
誰かに押し付けられる安心はオカシイ

日が経つにつれ明るみにでる真実
無用な被ばくをさせられたという事実
人災というに相応しい過失
問われることのない責任

3年半が過ぎた今も、このモヤモヤは消えることはない
今、福島は あの日を忘れ去ろうとしている
真実を 事実を 過失を 責任を

大人たちが侵した罪を償うことをせず、子どもたちに、未来に、その代償を負わせようとしている

足尾 沖縄 広島 長崎 水俣 福島
共通点はナニ?
同じコトを繰り返す愚かさ

次々でき上がるハコモノ 造られるニセモノ 子どもたちはミセモノ ?
本当の復興ってナニ?

モヤモヤ モヤモヤ
モヤモヤしながらも、今を生きている
モヤモヤしながらも、福島で生きていきたい

福島に生まれた意味があるから
福島を選んで生まれてきたから
そして子どもたちも、こんな私を選んで生まれてきてくれたから

仏典に『願兼於業』という文がある
あえて願って、宿業深い地に生まれ、その地で世を変えていくという意味だ

福島で生まれ育ち、結婚し、母になり
あの日を福島で迎えたゆえに、気づけたこと、行けた場所、忘れ得ぬ出逢いがあった

福島に心を寄せ、手を差しのべてくれる方たちが、日本中、世界中にいることを知った

そして、同じようにモヤモヤを感じながらも、福島で子どもを育てる決意をした母たちがいる
その母たちと手を携え、さまざまな想いを分かち合いながら、できることを模索しつつ、行動していく会をつくった

より良くハッピーに福島で生きていくために

『みな出発点は若き母たちの正義の声であった、怒りの行動であった、次の世代の安穏と幸福を願う母と母の連帯であった』

アメリカ公民権運動バスボイコット運動の始まりは ローザ・パークス女史
ケニア、グリーンベルト運動の始まりは ワンガリ・マータイ女史
いずれも一人の女性から始まった

私は信じたい 一人の力を 女性の力を
すべてを包み込む 慈悲深いお母さんの力を
無限の可能性を秘めた 子どもたちの力を
そして、すべての人がもつ 内なる光を

まずは福島に暮らす私自身が『自分のちから』を信じて行動することから始めよう

『見たいと思う世界の変化に あなた自身がなりなさい』 マハトマ・ガンジー

『ほとんどいつも、創造的でひたむきな 少数派が世界をより良いものにしてきた』 マーティン・ルーサー・キング

差出人 福 おかん


■福 おかんさんって、どんな人?
oka
huku
福島市在住 子どもは小学生2人 夫は1人
単身赴任中 看護師として総合病院勤務
福島で暮らすお母さんたちに情報交換、交流の場を提供するため、9月に任意団体を立ち上げたばかり
自宅除染の順番は、まだまわってこない
夏休みなど長期の休みを利用して、西日本へ子どもたちを保養に行かせている

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