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2014年3月号 木室陽一さんより、おてがみが届きました

前略

いま、島にいます。

特別な土地ではなく、
普通に道があり、家があり、

目の前は海で浜があり、
陸はすぐに森になっていて、

切り拓かれた斜面の畑には、みかんの樹がずらりと並んでいます。


「中島」という島です。

はじめはリゾート気分で、のんびりを味わいに立ち寄りました。
海で泳ぎ、お隣さんからいただいたお野菜を食べ。
夜には、別のお隣さんからいただいた、太刀魚と鯛のお刺身で乾杯。
お茶にお呼ばれしたり。
島の暮らしのお話しをうかがったり。

そうして、
なんでも、過疎と高齢化で、みかん畑を継ぐ人が年々減っているそうで。
「なんなら、みかん畑貸してやるぞ、好きにやってみぃ」
て話になりました。

「えー、そんなに簡単な話しのやりとりで決まってしまうなんてっ? やります!」

そんなんで、冬は収穫を手伝い、
今年から畑をお借りして、みかん作り始めました。


そこに、畑があるから、使っていいよ。
家も空いてるから、住みなさい。
お野菜、いっぱい出来たから、持ってっていいよ。
お魚とれたから、あげるよ。

そんな普通のやりとりで、毎日が進んでゆきます。


そんなに特別ではない、ごく当たり前の感覚。
いっぱいあるから、あげるね、っていう。


島で買うものは、お米とお酒だけでも、なんとか生きてゆける。

テーブル2つ分の野菜畑があれば、人は自分の食事はまかなえるそうです。

土地のもつ豊かさなのだなぁ。



ただし、移動には、お金がかかります。

島を松山市とつなぐフェリー「中島汽船」は一日5往復くらい。
片道870円。
松山市の港(高浜港もしくは三津浜港)に着いても、そこから市内への電車に乗ると400円くらい。

松山市駅前から、最短1時間半くらいで島に着ける距離なのに。


だから、かえって、島の豊かさは守られていたのか。



自由に使わせてもらっている畑から眺めると、
山肌に続くみかん畑の一部が、広くツタに絡まれているのが見えます。

使われなくなり、朽ちてゆく畑。

不思議と哀しい感慨は、ない。

山一面を覆っているみかんの樹を見ると、
僕はそら恐ろしさをおぼえたものです。
こんなに単一の作物が、山全体で生育するなんて。
見た目には見事だけれど、
作物の在り方として、共存を無視してるというか、何かを排除してるというか。

なので、
朽ちてゆく畑は、やり過ぎた事をもとに戻している様に見えて。
なんとなく、
それで、いいのだ。と思えてしまう。

でも、

そうして消えてゆく畑と共に、
その畑を造りあげてきた人々の営みも消えてしまう。

これには、僕は危機を感じます。


敗戦のショックから、すべてをかなぐり捨てて生きてきた、僕の両親そして祖父母の世代。
そこで作られてきたもの、失われてきたもの、
それらを僕らは、まだキチンと受け継いでいない。
断絶があり、無関心があり、そうせざるを得ないショックが、まだ戦争の時代から続いていて、

そのせいで、

アホな原発なんかを止める事が出来てない。


僕の使っているみかん畑は、
お隣のおじいちゃんが、まだ、結婚をする前から、
自分で石垣を組んで、
苗木を育てて、
モノラックを走らせ、
結婚してからは二人で、
台風の折には防風林を植えて、
肩が上がらなくなったので、収穫しやすいように、低く樹を剪定し、
そうして、数年前、伴侶を亡くされて、
おひとりでは、斜面の作業も厳しいから、ということで、
「なんなら、みかん畑やらんか?」
という話しになったのです。

このおじいちゃんから、
この畑から、
生まれてきたもの、失ってきたもの、
まだまだ学びたいと思ってます。


みかん畑は潰してでも、
ひとの営みは受け継いでゆきたい。

あ、うそやな。
みかん。美味しく作りたいです。

実は、おじいちゃんにはまだ内緒で、農薬とか肥料とか減らしたりしてます。
ズボラで怠惰なフリして、畑の草とかを出来るだけ排除しないようにしてます。

見た目は悪いかもだけど、樹のチカラを信じて、美味しい実がなるもんやと、信じてます。

それで、
この話しを、きちんとおじいちゃんに伝えられるように、
これから、
もっともっと、話しを聴きにいけたらな。
そこ、頑張らな、やな。


て思いながら、畑の様子見てきました。
ずっと8月は日照り続きだったのが、ほぼ一ヶ月ぶりの雨で、一安心。
その数日前、おじいちゃんと「雨欲しいですね〜」と声をかけたままで。今日はお休みのご様子。
まずは、一安心。

秋と夏の雲が一緒になったみたいなのが、海いっぱいに広がり、陽が斜めに差し込んで、波が輝いて、涼しい、
ほんとに気持ちのよい風が吹いてきて、

そんな普通の夕暮れ。


みなさまも、日々時々が豊かでありますように。


あ、みかん出来たら、ぜひ食べてみて下さいね〜!
お届けしたいです、送れるといいな。


まずは、近況のご報告まで。
ではでは。

草々


■木室陽一さんって、どんな人?
kimukimu


福岡県出身。邦正美、雑賀淑子、ケイタケイ等に創作、バレエ、即興を学ぶ。現在、ケイタケイ'sムービングアースオリエントスフィアの主要メンバーとして国内外で活躍中。バレエ、現代舞踊などへの客演も多数。 2012年より、愛媛の離島・中島にてみかん作りを開始する。土と共に生まれる舞踊を探求しながら、劇場にとらわれない、のびのびした表現を展開している。
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