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2013年3月号 茂木秀之さんより、おてがみが届きました

蘭の会のみなさま、はじめまして。茂木秀之と申します。2012年10月から釜ヶ崎で活動するアートNPOこえとことばとこころの部屋(ココルーム)のスタッフをしています。 釜ヶ崎というのは、大阪市西成区にある、日雇い労働者が集中する地域の通称です。暮らす人々は毎朝手配される日雇い仕事を得て、ドヤと呼ばれる2畳ほどの広さしかない簡易宿泊所、あるいは路上で眠ります。真冬でもたくさんの人たちが、路上生活を強いられています。

年末年始は越冬闘争といって、路上で亡くなる人が出ないようにと集中的に支援活動が行われます。2012年大晦日の夜、僕も地域外へのパトロールに参加してきました。昨年、襲撃された野宿者が亡くなる事件があった梅田。襲撃された場所は、駅構内の人通りの多い場所でした。人の命がそんな場所で奪われ、知られることもない、社会。その中で自分はどう振舞うのか、現場にお線香を立てながら、改めて問われる想いでした。

僕もほんの一年前に、仕事もなく手元のお金は3千円という状態になって呆然とした経験があります。同世代を見渡せば大学を出ても就職できないことが当たり前。派遣切りに合えば家を失うことも遠い話ではありません。自分がいま屋根のある場所で眠ることができているのは偶然でしかないと、常々思います。

ココルームも、毎年越冬に参加しています。恒例の書き初め大会を今年も行いました。炊き出しやステージイベントが行われる公園に集まる人たちに新年の想いを書いてもらいます。
若い男性が「今年こそ脱パチンコ」と書きました。
「去年も書いたけど、でけへんかってん…」
全国の建設現場を転々とする仕事をしている彼は、会社が前貸ししてくれるお金をパチンコにつぎ込んでしまい、年末とお盆に出身地である西成に帰ってきたときはドヤにも泊まれず野宿をしている、と話しました。ギャンブル依存のサポート団体に相談したこともあるそうですが、住所が定まることのない生活の中では継続的な支援を受けることができません。

「電話で相談してもな、腕引っ張って止めてくれるわけでもないやん。」

とにかく、釜ヶ崎に来たときはカフェに寄って話聞かせてよ、と伝えました。ココルームは商店街でカフェと交流スペースを運営しています。お盆に帰って来たときに、彼は姿を見せてくれるでしょうか。パチンコをやめられなくてもいい、借金が膨らんでいても仕方がない、ただもう一度会えたらいいと、思います。
出会いを大切にして、何もできなくても寄り添い続ける。その中で生きることの回復につながる何かが起きればいい。そんなささやかな想いと振る舞いを大事にして、僕たちは今日もお店を開けています。



■茂木秀之って、どんな人?
mogi
1983年埼玉生まれ。演劇、コミュニティカフェ、知的障害者支援活動などに関わりながら東京で10年過ごし、原発震災直後に広島県の生口島へ避難。避難者の多く集まる尾道地域で自給的暮らしを試みるがうまくいかず、2012年10月に移った大阪にてNPO法人こえとことばとこころの部屋スタッフに。まだまだ、生き方模索中。
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