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2018年3月号 樋口ミユさんより、おてがみが届きました

「臨時ニュースを繰り返します
 現在、詩人の数がまったく足りておりません。
詩人の数は決まっています。
独りの詩人が消えれば、独りの詩人が生まれる。
しかし、詩人の数は足りておりません。
今、メディアに乗って、電波に乗って、呼びかけます。
あなたこそが詩人ではなかったのでしょうか?
絶対数に満たない。
まだ気がついていない、
未だ詩人となっていない、
隠れ詩人がいるはずなのです。
自分自身でも詩人と気がつかず
今その人生を終えようとしている、
もしくは全く別の人生を選ぼうとしてるあなたこそが、
あなた自身が、
詩人なのではないでしょうか。
臨時ニュースを繰り返します。
現在、詩人の数がまったく足りておりません。
臨時ニュースを繰り返します」

そんな言葉から始まる戯曲を書きました。

地上からすべての詩人がいなくなったら、きっと世界は終わりをむかえてしまう。
世界情勢の均衡は詩人によって、詩人の言葉によって保たれている。傾いた経済を、二度上がった北極の温度を、武装しはじめた国を、絶滅しかけた人種を、沈んだ大地を引き上げるのは、詩人が朝日について考えるとき、夕暮れについて考えるとき、ニンゲンについて考えるとき。言葉の、その奥に広がる言葉になる前の言葉が、宇宙を連れてくる。

んなワケない。
ええ、そんなコトがあるワケない。
けれども、世界は言葉によって支えられているのではなかろうかとずっと疑っているあたしは、どうにかしてそれをお芝居に出来やしないだろうかと取り組んだわけであります。

言葉で世界を作るのは誰か。
言葉と戦っているのは誰か。
言葉を考えるのは誰か。
言葉を探しているのは誰か。
言葉になる前の言葉を掴もうとしているのは誰か。
見えるはずもない思考をカタチ創るのは、誰か。

小説家や劇作家は言葉を駆使する。
ああ、だめだわ。
使いこなしちゃ探している感じがしない。
戦っている感じがしない。
では誰が?
・・・・・・詩人だ!!
と、ここへたどり着いたあたし。
安直でしょうか。
思い込みでしょうか。
ただの憧れでしょうか。
イメージ先行でしょうか。

うん。でも、でもね。
そんなコト、あるわけないと書きつつも。
あたしはどこかで信じているのであります。
やっぱり。
地上からすべての詩人がいなくなったら、きっと世界は終わりをむかえてしまう。

と、あたしは考えるわけでありますが、詩人のみなさん。
どうお考えでしょうか。
よろしければお返事ください。



■樋口ミユさんって、どんな人?

miyu
樋口ミユ higuchi miyu 劇作家・演出家 Plant M主宰
誕生日 4月6日 出身地 京都市

劇団Ugly duckling旗揚げ以降、解散までの劇団公演32作品の戯曲を執筆する。劇団解散後は、座・高円寺の劇場創造アカデミー演出コースに編入し、佐藤信氏に師事。2012年にplant Mを立ち上げる。

受賞歴 
1999年 3月 「深流波〜シンリュウハ〜」で第7回OMS戯曲賞大賞を受賞。
2000年 3月 「ひとよ一夜に18片」で2年連続、第8回OMS戯曲賞大賞を受賞。
2012年6月  第38回放送文化基金賞受賞ラジオドラマ部門「飛ばせハイウェイ、飛ばせ人生」
2017年2月  大阪市文化祭奨励賞 女優の会 「あたしの話と、裸足のあたし」の舞台成果

ホームページ https://plant-m.jimdo.com/
ブログ http://plant-m.blogspot.jp/
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