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2013年8月号 松本恵実さんより、おてがみが届きました

蘭の会の皆様、はじめまして


西成で、「まちづくりコーディネーター」と称して、「地域活動」に勤しんでいる松本恵実と申します。

「まちづくりコーディネーター」とか「地域活動」とか、あまり聞きなじみのない言葉が並んだことと思います。

この言葉は、私の手作り?なのです。「太陽の下に新しい事はない」、、といいますので、もしかしたら、もうあるのかもしれないですけれど、私は私流にこの言葉を使っております。


< 私は、なにをしているのか、、、>

「みんな仲よく」、「地域を家族のように」というのが最終目標です。


、、といっても、 急に、「家族のように」、、なんて、うまく行くわけがないので、いまは、地域で顔見知りの人が増えるようにと、イベントを開いたり、地域のブログを書いたり、商店街の掲示板に町のニュースを掲示させてもらったりしているわけです。

長期戦です。

で、いまのところ、手弁当でしている活動です。

なぜこんな事をしているのか、、については、私の人生を少しお話しさせていただいたほうがいいかと思いますので、書いてみます。


、、ゆく河の流れは絶えずして、しかも、もとの水にあらず、、
早いもので、生まれて50年、西成に来てからでも、4年が経ちました。

西成に来る前は、ロサンジェルスに24年暮らしていて、最後の十数年は鍼灸師をしていたのです。鍼灸の仕事はとても面白かったし、ロサンジェルスも大好きでした。患者さんも周囲の人にも恵まれておりました。

けれども、どういうわけか心の健康を崩しまして、2009年に日本に戻って参りました。

最初は実家においてもらったのですけれども、元気になってきたので、実家近くの天下茶屋のアパートに移り住むことになりました。

天下茶屋というのは、去年あたりから全国的に有名になった、西成区にあります。

実家は西成区に隣接する阿倍野区にあり、私が住む天下茶屋のアパートとは、自転車で数分の距離なのですが、それでも西成区と阿倍野区では違いがあるように思いました。

というのも、
引っ越しした翌日、朝のゴミだしに外に出ると、通りがかりの二人組のおばちゃんが、「面白い服着てるねぇ、、!」と、私のエスニック風のパンツを見て笑顔で語りかけて来はる(きはる)のです。(きはる とは、大阪弁の敬語で、「来る」と「いらっしゃる」の間くらいの言葉です)

とてもフレンドリーなのです。

実をいうと、ロサンジェルスでは、知らない人同士であっても、タイミングが合えば、気さくに話をするのが普通でしたので、日本に帰ってから両親以外の人とあまり喋る機会がなかった私は、この一件で、忽ちこの町が大好きになりました。

「西成フレンドリー体験」は、この後も途切れることなく続きました。

それで、私は、日本に帰ってから感じていた、「無縁社会にまつわる問題」が、この町から解いていけるのではないか?という希望を抱いたのです。

(記憶力のいい方は、このへんで、(あれ?この人、鍼灸師でなかったっけ?)と思い出されたのではないでしょうか?)


そうです、私はカリフォルニア州の免許を持つ鍼灸師でした。

日本の鍼灸院では、カーテンで仕切られただけの診療室も多いようですが、カリフォルニアでは鍼灸治療は概ね個室で行われます。

それで、患者さんとの会話もプライバシーを気にすることなく、いろいろなお話をすることになります。

そんな中で気づいたのが、アメリカ社会の「暮らしの脆弱さ」でした。

家族のために一所懸命に働いてきた人が、年老いて車の運転が難しくなると、ホームと呼ばれる老人施設に入ることになり、家族との面会も年に数回、、

夫婦ふたりで子どもを育てているために、子どもが人間関係の諸々を教わることなく成長してしまい、ちょっとした諍いでも、すぐに弁護士や代理人が必要になってくる、、

シングルペアレントで子育てをしている人も大変で、親だけが子どもに注意する形になり、こどもが親に反論できるような年齢になると、親対子どもの対決になる、、
(本来は子どもは社会のルールを回りの大人全体(社会)から教わるべきなのだと思います)、、

そんなことを見聞きしているうちに、鍼灸師ではありますが、世の中の家族のありようや社会のありようについて考えるようになっていたのです。

鍼灸師として日本で開業するためには日本の国家免許が必要で、そのためには鍼灸学校に行き直さねばならず、費用も5,6百万円はかかるという現実も、鍼灸師に戻るという選択肢から私を遠ざけました。

「無縁社会」という言葉が流行語になった日本の中で、このままいけば、自分の番が来たときに、高齢者がいまよりも もっと生きにくい世の中になっているのではないかしら?

そんな不安もありました。

自分になにかできることはないかと思い、

まずは地域社会のことを知ろう、
知ったなかから、なにかできることがあるはず、、

そんな気持ちで「地域活動」を始めたわけです。


当初の計画では、地域のニーズを知っていくなかでビジネスの種が見つかり起業、
生活できるくらいのお金が回ればいいな〜ということでしたが、
まだそこにも全然至っておらなくて、「本業家事手伝い」とアルバイトに勤しみながら、

小学校の評議委員や
いきいき放課後事業(小学校で放課後に児童を預かる)の指導員、
『人情マガジンにしなり』編集スタッフ、
西成区政会議の公募委員、
地域のまちづくり協議会の発起人、

などなど、、をさせてもらって地域の事を学んでおります。


それでも、今月とうとう、「地域の家」計画を少し前にすすめ、
西成区玉出に物件(長屋)を借りる事になりました。

地域の人誰もが寄り集まることができ、お茶を飲める場所、情報発信をして、イベントなんかもできる場所、、、

そう! 「ココルーム(*1)の玉出版」、、みたいなことができないか、と思っております。
みなさまも、ぜひ、ご近所のことに関心を向けてみてくださいね。
まずは、笑顔で話をしてみてください。

普通の人が普通に暮らしているだけ、、と思っている近所の人や場所からでも、
案外、面白いことが見つかるかもしれませんよ、、!!


松本恵実

*1 ココルーム http://www.cocoroom.org/

■松本恵実さんって、どんな人?


大阪生まれ。1985年日本大学芸術学部文芸学科卒業の年に渡米 。
Samra University of Oriental Mediceine 卒業後、加州鍼灸師免許取得。
2009年帰国、西成に居住。銭湯文化サポーター's 会員。今年50歳になりました。
ブログ「満々舎流」、「玉出なうす


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