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2011年3月号 植田裕子さんより、おてがみが届きました

 女流詩人のみなさま



恋をしている時と、

色のあふれる自然を見た時にはいつも、

わたしが詩人か小説家だったらなぁと思います。


はじめまして。植田と申します。こんなふうに自分のプロフィールを作って、どなたかに読んでいただく文章を書くのは人生初めてのことです。


二月から、大阪は釜ヶ崎のアートNPO、こえとことばとこころの部屋(ココルーム)で仕事をしています。人の行き交う商店街に、カフェとメディアセンターの二つのスペースを持ち、日々運営をしながら、訪れる人と話をし、企画をし、食事を作り、本や通信を作り、メールをし…、書ききれないようなこまごまとした事を平行して行う仕事場です。


釜ヶ崎という街は、日本最大の寄せ場、日雇い労働者の街で、街を歩くと、すれ違う人のほとんどが高齢の単身男性。問題集積地ゆえに、その解決方法を探る試み・知恵もたくさん集まっている地域だと言われます。


そんな地域の中にあるアートのNPO。カマン!メディアセンターのスペースにいると、通る人に度々、ここは何屋さんなの?と問われます。


その度に、「アートNPOで…」と答えてみたり、「毎日のように小さなイベントをやっています…」と言ってみたり、「誰でもごちゃごちゃなままに居られる場所づくりの実験を…」と口ごもってみたり、ここへ来てまだ一ヶ月、その問いにうまく答えられたことがありません。実際ここでは、形としてわかりやすい「アート作品」が展示されることや演劇や音楽のライブが行われる機会はほとんどなく、日々訪れる人と話をして、その中から関係や企画を紡ぎだす、その姿勢そのものをアートと呼んでいるのだから、「ひとことで説明してっ」と言われても、とっても難しい…!


さて、私の紹介をします。滋賀で生まれ、大学進学の時に、音楽や舞台の周辺を学びたいという(本当に)漠然とした思いと共にアートマネジメントを学べる関東の大学へ行きました。


そうしたら、なぜか現代アートのマネジメント専門の先生に出会い、最初はわけのわからないものを前に拒絶反応を示していたのですが、あるアーティストに惚れたことがきっかけで、地域でのアート・プロジェクトに参加し、既存の価値観をぐらつかせ、境界線を溶かしてしまういくつかの作品に出会い、しんどい毎日を送る中で、「ありえない」と言ってしまえるようなことは何もないことを知り、徐々に、アートの、システムや心のありようを「問いなおす姿勢」に魅せられ、いま、その力の強さ(と弱さ)をとことん見たいと、ココルームへ来てみたというところです。



ご飯を食べること、本を読むこと、ニュースを見聞きし悲しい思いに暮れること、友人の悩みを聞くこと、話をすること、淡々もんもんと仕事をすること。この仕事に就き始めたことは、すべてを「ひとつの」私の生活という軸の上に置くことができないか、というひとつの実験の始まりでもあります。どこまでできるのか、まったくわからない。


これからも、生活の隅々で、言葉を紡ぐみなさまにお世話になります。どうかよろしくお願いします。


■植田裕子ってどんな人?

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植田裕子 Yuko Ueda

1985年滋賀県生まれ。東京藝術大学音楽環境創造科在籍中に取手アートプロジェクトスタッフ、NPO法人こえとこころとことばの部屋(ココルーム)インターンを経験。卒業後一般企業に就職し、宿泊施設にて三年弱、文化事業を担当。2011年2月よりココルーム勤務。

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